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乳房再建の実際
乳房再建には大きく分けて自家組織で行なうものと、人工物で行なうものがあります。 それぞれ利点と欠点があり、現在でも患者さんの状態や希望に応じてどちらも選択されています。
自家組織 | 人工物 | |
---|---|---|
利点 | ・自然な柔らかさや下垂を再現しやすい ・長期的なメンテナンスが不要 ・組織採取部位の皮膚を胸部皮膚として使うことで一期再建が可能 |
・体の他の部位に傷ができない ・手術侵襲が小さく、手術時間が比較的短い ・入院期間が比較的短い |
欠点 | ・体の他の部位に傷ができる ・手術侵襲が大きく、手術時間が比較的長い ・入院期間が比較的長い ・血流不足による皮弁壊死の可能性がある |
・自然な柔らかさや下垂を再現しにくい ・長期的なメンテナンスが必要(破損、入替え) ・胸部皮膚拡張が必要なため二期再建となる方が多く、手術回数が増える ・血腫や感染に弱い ・大胸筋が切除されている場合は行えない |
1. 自家組織
現在日本では自家組織として背中の組織を用いる広背筋皮弁と、下腹部の組織を用いる腹部皮弁が行われています。腹部皮弁にはさらに種類があり、腹直筋を全て含めるもの、腹直筋を一部含めるもの(筋体温存腹直筋皮弁:Muscle-sparing TRAM flap)、腹直筋を含めないもの(深下腹壁動脈穿通枝皮弁:DIEP flap)があります。これらは血管の走行や必要な組織量に応じて術前に判断します。広背筋皮弁と腹部皮弁にもそれぞれ利点と欠点があります。
広背筋皮弁 | 腹部皮弁 | |
---|---|---|
利点 | ・血管吻合が必要なく、血流が安定している ・腋窩リンパ節郭清による欠損を充填しやすい ・妊娠を希望する方にも適応しやすい |
・大きな乳房の再建も可能 ・腹部脂肪が減り、痩身効果がある |
欠点 | ・大きな乳房の再建は困難 ・競技レベルのスポーツには影響が出る ・背部に陥凹、傷ができる |
・術後腹壁ヘルニアを生じる可能性がある。 ・術後に妊娠を希望する方には向かない ・顕微鏡下の血管吻合を要するため、術後血管閉塞による組織壊死の可能性がある |
①広背筋皮弁
左皮下乳腺全摘術後
二次一期再建
広背筋皮弁
背部の創は目立たない
左皮下乳腺全摘術後
一次二期再建
エキスパンダー挿入後(左写真)に
広背筋皮弁(右写真)
②腹部皮弁
左胸筋温存乳房切除術後
二次一期再建
腹部皮弁(DIEP flap)
右皮下乳腺全摘術後
一次二期再建
腹部皮弁(DIEP flap)
2. 人工物
再建する予定の乳房の皮膚と大胸筋の下にエキスパンダーという水風船を入れます。
保険診療が可能な
乳房エキスパンダー
(アラガン社製)
傷が落ち着いたあと、皮膚の余裕を見ながら外来で2~3週程度毎に少しずつ生理食塩水を注入して皮膚を膨らませていきます。皮膚を膨らませ終わってから6ヶ月程度たったところで、シリコンでできた人工物(インプラント)に入れ替えます。胸部皮膚が十分にある場合は、エキスパンダーを入れる過程を経ずにインプラントを入れることもあります。
保険診療が可能な
乳房インプラント(アラガン社製)
様々なサイズ、形がある。
人工物を用いた乳房再建
右胸筋温存乳房切除術後にエキスパンダーを挿入した写真(一次二期再建)
生理食塩水が左から順に100ml、160ml、280ml注入されている様子
外来で2-3週間毎に少しずつ生理食塩水を追加してエキスパンダーを膨らませていく