リンパ浮腫の専門的診療

琉球大学医学部附属病院 形成外科

リンパ浮腫の治療

浮腫の治療とリンパ管に対する治療を分けて考える

リンパ浮腫の治療には大きく
複合的理学療法
手術治療
があります。
大事なことは理学療法は浮腫に対する治療、手術療法はリンパ管障害に対する治療であることです。

複合的理学療法(用手的リンパドレナージ、弾性着衣による圧迫)

いわゆるマッサージや弾性ストッキングと言われるものです。
用手的リンパドレナージについて(マッサージとも言います)

集合リンパ管には薄い筋肉がついており、腸のように蠕動運動を行っています。このリンパ管は圧力やリンパを流してあげる刺激で活発に動くようになります。

(動画参照)

刺激されたリンパ管は30分から1時間で戻りますので、マッサージを受ける、というより指導してもらって自分で行えるようにすることが大切です。

弾性着衣について

弾性着衣は組織間液の圧力を上昇させるため、水分やある程度の蛋白を血管壁、リンパ管壁から再吸収させる効果があります。

利点
しっかりした施設の指導を受けると、中程度のリンパ浮腫でも浮腫はほとんど改善します。
「圧迫をやめたら元にもどってしまうから意味ないのではないか??」と思われるかもしれませんが、浮腫をほっておくと組織への障害が続くため、コントロールすることは非常に大切です。

欠点
リンパ浮腫は慢性疾患であるため、浮腫をコントロールしても徐々に増悪します。
理学療法を続けても効果がなくなってくる可能性があります。
高齢になったときに高圧のストッキングを続けるのは無理があります。

手術治療

手術治療は20年ほど前までは効果がないばかりか増悪する可能性が高い術式が行われていました。集合リンパ管といわれ脂肪の中を走る太いリンパ管でも大きさは0.3~0.5mm程度です。
そのため、これを扱える治療がなかったのです。
しかし、顕微鏡や手術材料の進化から効果が得られる治療ができるようになりました。

②-1リンパ管静脈吻合術(LVA:lymphtico venular anastomosis)
リンパ管と静脈をつなげる手術です。
流れの悪くなっている部位を迂回して、静脈から心臓にリンパ液を返す方法になります。

(リンパ浮腫の模式図)

リンパ浮腫の模式図

(リンパ管静脈吻合を行った際の模式図)

リンパ管静脈吻合を行った際の模式図

手術中の動画

手術の様子

利点
手術侵襲が非常に少ない手術です。手術で扱う集合リンパ管は皮下脂肪内を走っているため、神経や筋肉を傷つけず、小さな傷で手術が行えます。歯を抜くよりはるかに侵襲が少ない手術です。

欠点
リンパ管自体が非常に細いため、高い技術が必要になります。そのため海外ではあまり行われていません。
日本でもしっかりと結果がでるようなリンパ管静脈吻合術を行っている施設はわずかです。
また、集合リンパ管の流量の個人差、部位差が非常に大きく、流量の小さいリンパ管で手術をしてもすぐに閉塞してしまいます。

流量の多いリンパ管を術前から把握できれば良いのですが、現在できません。
そのため何か所か手術を行う必要があり、時間が長い手術となります。

利点、欠点を考えてもリンパ浮腫が改善する可能性が高いため、当院ではこの手術を行うことが多いです。

リンパ管静脈吻合後、開存が確認できた症例

リンパ管静脈吻合後、開存が確認できた症例

動画を見ると、開存した部分から静脈にリンパが早い速度で吸収されていることがわかります。
この際にマッサージを組み合わせるとさらに効果的であることもわかります。
当院では手術のみではなく、最大限の効果を得るため、術後の理学療法の指導にも重点を置いています。

また、当院では術後に必ず吻合部分の開存評価を行っています。術後に開存した部分を見ると、安心してストッキングによる圧迫を弱めることや、終了することができます。

実際の手術症例

左乳癌術後の患者さんです。左前腕、上腕で3か所リンパ管静脈吻合を行いました。
傷はほとんどわかりません。この患者さんは圧迫不要となりました。

Bリンパ節移植

体の多部位からリンパ節を移植します。この際にリンパ節を栄養している血管をふくめて移植することにより、離れた部位にあったリンパ節が患部で活動するようになります。
未知な部分もありますが、リンパ節には集合リンパ管以上のポンプ作用(リンパ液を送り出す)と、
さらに水分の吸収作用があります。このような作用により幹部の浮腫が改善されます。

利点
失われたリンパ節を再度移植することで、大きな効果が期待できます。
また、LVA(リンパ管静脈吻合)ほどは微細な手術ではないため、欧米でも広まってきています。

欠点
採取できるリンパ節に限りがあります。
また、LVAに比べると手術侵襲は少し大きくなります。
開腹したり、命にかかわったりするような侵襲ではもちろんありません。

リンパ節移植は上肢のリンパ浮腫に有効と考えています。
なぜなら腋下リンパ節に必要なリンパ節の量は多くないため、下肢から必要最小限のリンパ節を採取するだけで完全に治癒する可能性があります。
いっぽうで下肢のリンパ浮腫ではどうしても移植するリンパ節が足りなくなります。
このため、下肢の場合はリンパ移植単独ではなくLVAなどを組み合わせる必要があるでしょう。

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