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眼瞼下垂
まぶたが下がって物が見えにくくなる状態です。物を見るために眉毛を大きく持ち上げたり、顎を挙げたりして物を見る癖がつきやすくなります。視野障害という機能面の問題だけではなく、外見的にも‘眠たそう’な印象を与える整容面の問題を生じます。治療としては手術が標準となっていますが、眼瞼下垂の原因や病態は多種多様なため、専門家による手術前の診断が非常に重要となります。以下、診断方法、分類、治療方法について説明します。
診断方法
主に静的な診断と動的な診断の2つの診断基準があります。
静的な診断
正面を向いて力を抜いたときに、まぶたがどの程度黒目(角膜)にかぶさっているかを診察します。瞳孔(黒目の中心)とまぶたまでの距離を測ることが一般的です。
動的な診断
まぶたを持ち上げる上眼瞼挙筋という筋肉の力を診察します。具体的には眉毛を動かさずに下から上をみたときに、まぶたがどの程度動くかを測定します。
このほかに眉毛の位置、額のしわ、眼窩の大きさ、眼球の突出具合、睫毛の角度、顎の挙上具合、頭位なども含めて総合的に眼瞼下垂の重症度を診断します。
また、肩こり、不眠、頭痛などの不定愁訴をきたす場合があります。眼瞼下垂を治療することにより、これらの不定愁訴が改善する可能性があります。
分類
眼瞼下垂の分類方法には様々なものがありますが、ここでは
1.先天性眼瞼下垂(生まれつき症状がある場合)
2.後天性眼瞼下垂(年をとってから症状がでる場合)
の2つに分類して説明します。
1.先天性眼瞼下垂
生まれたときからまぶたを挙げる筋肉(上眼瞼挙筋)の発達障害を認め、目を大きく開けることが困難な状態です。そのため額の筋肉(前頭筋)を利用して目を開くことが多くなります。片側の場合が80%を占めますが、両側の場合もあります。症状は軽度から重度まで様々です。琉球大学病院 形成外科では特に先天性眼瞼下垂を含めた生まれつきの目の病気の治療に力を入れています。
2.後天性眼瞼下垂
a)腱膜(けんまく)性眼瞼下垂とb)その他の眼瞼下垂に分けて説明します。
a)腱膜性眼瞼下垂
腱膜という上眼瞼挙筋の終点部分が伸びたり、ゆるんだりして、もともと普通に開いていたまぶたが、加齢とともに下がる状態です。後天性眼瞼下垂の患者さんの大部分を占めています。年をとって生理的に下がることが原因(加齢性眼瞼下垂という)の場合が多いですが、ハードコンタクトレンズを長期装用している方に生じてくることもあります。「眼が細くなった、眼をあけているのが疲れる」という症状だけでなく、「肩こりがする、頭痛がする、眠れない」などの不定愁訴を生じることがあります。
b)その他の眼瞼下垂
神経、筋肉、神経筋接合部等の障害が原因で、まぶたが下がることがあります。重症筋無力症では夕方に症状が下垂するなどの症状がみられます。またミトコンドリア脳筋症では瞼があがらないだけではなく、眼の動き自体も障害されてしまいます。琉球大学病院 形成外科は、神経、筋肉、神経筋接合部の障害が原因の眼瞼下垂の治療にも力をいれています。
治療方法
1.眼瞼挙筋の能力がある場合
まぶたを持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋)の力が十分にある場合に用いる術式です。
眼瞼下垂の症状に応じて以下の手術のいずれかを行います。
a. 経結膜的挙筋腱膜前転術
皮膚に大きな切開をつけずに、結膜側から眼瞼挙筋腱膜を短縮する方法です。
軽症から中等度までの眼瞼下垂で、余剰皮膚の少ない症例に適しています。
術後の腫脹や出血が非常に少ないことが利点です。上眼瞼の陥凹も改善します。
*Shimizu Y, Nagasao T, Asou T
A new non-incisional method for blepharoptosis
J Plast Reconstru Aesthet Surg. 63(12):2004-12, 2010
眼科の手術教科書である眼手術学(文光堂 2013)にも掲載されています。
美容外科的側面が強いため、自費治療が基本になります。
正面図
断面図
症例写真
b. 眼窩隔膜反転法(信州大学方式)
皮膚に切開を加えて眼瞼の奥の組織にアプローチする方法です。眼窩隔膜を反転して瞼板に固定します。下横走靭帯、外角など、開瞼を妨げる組織の切離、切除を併用します。状態に応じて、眼窩脂肪切除、余剰皮膚切除を追加します。保険治療が基本になります。
c. 上眼瞼余剰皮膚切除術
挙筋腱膜には手を付けず、皮膚の切除だけを行います。重さが減るために開瞼しやすくなります。自費治療が基本になります。
d. 眉毛下皮膚切除術
眉毛の下で皮膚を切除する方法です。傷跡が目立たなくなるのに1~3か月程度を要しますが、自然な眼瞼形態を得られることが多いです。自費治療が基本になります。
e. 前頭筋吊上げ術
眼瞼挙筋能力がない場合に行う術式とされていますが、挙筋能力がある場合に行い良好な結果を得ることも可能です。保険治療が基本になりますが、自費治療になる場合もあります。
2.眼瞼挙筋能力がない場合
まぶたを持ち上げる筋肉(上眼瞼挙筋)の力が不足している場合に用いる術式です。
眉毛を持ち上げる筋肉(前頭筋)の力をまぶたに伝えるために筋膜、手術用糸などの人工材料を眼瞼に移植する方法があります。
先天性眼瞼下垂、外傷性眼瞼下垂、重症筋無力症、筋肉疾患、神経疾患の患者さんに行うことが多いです。
a. 筋膜移植術
大腿筋膜や側頭筋膜を用います。眉毛下からまぶたまで眼窩隔膜という組織の裏側に筋膜を移植します。丁寧な手術を行えば、傷跡はほとんどわかりません。保険治療です。
b. 人工材料移植術
筋膜を移植するほどではない症例に用います。他部位に傷跡がつかないこと、手術時間が短いことが利点です。ナイロン糸やゴアテックス糸を用いることが多いです。手術の傷跡はほとんど目立ちません。術後の腫脹もわずかです。保険治療が基本ですが、状況により自費治療になります。
琉球大学病院の形成外科では、全ての眼瞼眼窩の形成外科治療に対応しております。全身疾患に伴う眼の病気の場合には、他科と協力して治療にあたります。 まずは紹介状を御持参いただき火曜日の清水雄介の初診外来を御受診ください。